【国の考え方】副業・兼業の促進に関するガイドラインとは

副業 ガイドライン2 副業

国の副業に対する考え方については、平成29年の「働き方改革実行計画」に以下のように示されています。

①日本経済再生に向けて、最大のチャレンジは働き方改革である。「働き方」は「暮らし方」そのものであり、働き方改革は、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方そのものに手を付けていく改革である。
②一人ひとりの意思や能力、そして置かれた個々の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を追求する。
③改革の目指すところは、働く方一人ひとりが、より良い将来の展望をもち得るようにすることである。多様な働き方が可能な中において、自分の未来を自ら創っていくことができる社会を創る。意欲的ある方々に多様なチャンスを生み出す。
④副業・兼業のメリットを示すと同時にに、これまでの裁判例や学説の議論を参考に就業規則等において本業への労務提供や事業運営、会社の信用・評価に支障が生じる場合以外は合理的な理由なく副業・兼業を制限できないことをルールとして明確化するとともに、長時間労働を招かないよう、労働者が自ら確認するためのツールの雛形や、企業が副業・兼業者の労働時間や健康をどのように管理すべきかを盛り込んだガイドラインを策定し、副業・兼業を認める方向でモデル就業規則を改定する。
(出典:厚生労働省HP 働き方改革実行計画(一部抜粋)(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)

国は「働き方改革はライフスタイル改革」、「一人ひとりの事情等に応じた働き方の追求」、「多様な働き方のできる世の中で自ら未来を創ることができる社会を創る」を実現するためにガイドラインを策定しています。この「副業・兼業の促進に関するガイドライン」とは具体的にどういったものなのか、気になった方は是非一度この記事を読んでみてください。

1 副業・兼業の促進に関するガイドラインとは


平成29年3月28日 働き方改革実行計画の決定を受けて厚生労働省において柔軟な働き方に関する検討会が行われ、公表されたのが「副業・兼業の促進に関するガイドライン」です。
構成は以下の通りです。

1 副業・兼業の現状
2 副業・兼業の促進の方向性
3 企業の対応
4 労働者の対応
5 副業・兼業に関わるその他の対応

1 副業・兼業の現状

原則、労働者は他の会社等の業務に従事することができる。その旨を会社に届出し、会社は以下の場合には禁止・制限することはできることとしています。これは令和4年11月改定のモデル就業規則に記載されています。
※あくまで会社への届出であるため以下の条件に該当しなければ禁止・制限できないものと読めます。

①労務提供上の支障がある場合
②業務上の秘密が漏洩する場合
③競業により自社の利益が害される場合
④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

2 副業・兼業の促進の方向性

副業・兼業について、以下のメリット・留意点を踏まえて労働者の希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要であるとしています。

○労働者のメリット
→スキルや経験などのキャリア形成
→自己実現
→所得
→起業・転職の準備
●労働者の留意点
→長時間労働
→職務専念義務、秘密保持義務、競業禁止義務を守る
→雇用保険等の適用がない
○企業のメリット
→労働者の知識・スキルの習得
→労働者の自立性・自主性を促進
→優秀な人材の流出抑制による競争力の向上
→社外の情報の流入による事業機会の拡大
●起業の留意点
→労働者の時間管理・健康管理
→職務専念義務・秘密保持義務・競業禁止義務の確保

3 企業の対応

企業の対応は以下に示すとおりです。副業・兼業にかかる相談、自己申告等を行ったことにより不利益な取扱いをすることはできないとしており、加えて、企業の副業・兼業の取組みを公表することにより多様なキャリア形成を促進することが望ましいといった内容が基本的な考え方に示されています。

  1. 原則、副業・兼業を認める方向とし、労働者と企業の双方が納得感を持ってすすめることができるよう、十分コミュニケーションをとる。
  2. 過労等により業務に支障を来たさないようにする観点から、就業時間を把握すること等を通じて、就業時間が長時間にならないよう配慮する。
  3. 健康診断・長時間労働者に対する面談始動・ストレスチェックやこれらの結果に基づく事後措置等を実施する。

4 労働者の対応

労働者の対応は以下に示すとおりです。副業・兼業先の求職活動をする場合には、適切な情報を集めて適切な就職先を選択することが重要です。企業が自社のHP等において公表した副業・兼業に関する情報法を参考にすることや、ハローワーク等で公開されている求人情報を参考にすることも有効です。

  1. 労働者側の対応として、副業・兼業を希望する場合は、自分の会社の副業・兼業に関するルールを確認し、そのルールに照らして、副業・兼業を選定する。
  2. 労働者と企業の双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と労働者との間で十分にコミュニケーションをとる。
  3. 自ら各事業場の業務の量やその進捗状況、それに費やす時間や健康状態を管理し、他の事業場の業務量、自らの健康状態等について報告する。
  4. 副業・兼業を行い、20万円を越える場合には確定申告をする。

5 副業・兼業に関わるその他の対応

○労災保険の給付(休業補償、障害補償、遺族補償)
→災害が発生した就業先+非災害発生事業場の賃金を合算して労災保険給付を算定
→複数就業者の就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定
○雇用保険・厚生年金保険・健康保険
→複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者について雇用保険を適用(雇用保険)

2 改編の流れ(令和2年度改訂)

1 目的の追加
2 企業の対応(基本的な考え方)の追加・修正
3 企業の対応(時間管理について)の追加・修正
4 企業の対応(健康管理について)の追加・修正
5 労働者の対応の追加・修正
6 その他の制度の追加修正

1 目的の追加

  1. それまで無かったガイドラインの目的を明確にしています。
(目的)
副業・兼業を希望するものが、安心して取り組むことができるよう、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理等について示したものである。

2 企業の対応(基本的な考え方)

  1. 副業・兼業をする場合に留意する事項、禁止・制限する場合の条件について明記しています。
  2. 副業・兼業等の違反が懲戒事由としている場合の処分について、実質的な要素を考慮した上で、あくまで慎重に判断すると明記しています。

3 企業の対応(時間管理)

  1. 労働時間は異なる事業所においても通算される
  2. 副業・兼業の内容を確認する
  3. 時間外労働の割増賃金の取り扱い
  4. その他

4 企業の対応(健康管理)

  1. 健康確保措置の実施対象者について、副業・兼業の時間の通算は不要としていたものを、使用者の指示等によりはじめた副業・兼業は労働時間を通算して健康確保措置をすることが適当としています。
  2. 使用者が労働者の副業・兼業を認めている場合は自己管理の指示、必要に応じた健康確保措置を実施することが適当としています。
  3. 使用者の指示により副業・兼業を開始した場合は他の使用者との間で情報交換し、健康確保措置の内容に関する協議を行うことが適当としています。

5 労働者の対応

  1. 副業・兼業先を選ぶ際にハローワークを活用することなどを具体的に示しています。

6 その他の制度

労災保険給付について、従来は災害が発生した就職先の賃金分のみに基づいて算定していましたが、非災害発生事業場の賃金も合算して労災保険給付を算定することとしています。これにより1の事業場だけだは給付の対象ではなかったものが2の事業所と合算すると、労災給付が対象となることが明記されています。

3 改編の流れ(令和4年度改訂)

1 企業の対応
2 労働者の対応

1 企業の対応

副業・兼業の取り組みをHP等で公表することが望ましいとしている。

1 副業・兼業を許容しているか否か。
2 条件付きの場合はその条件について。

2 労働者の対応

上記の情報を参考にして、自分のキャリア形成を念頭に求職活動を行う。

4 国の考え方とは

前段でも説明したとおり、国の考え方は副業・兼業を認めていく方向です。ただし、以下の点については、副業・兼業を禁止・制限する条件になっていますので、注意が必要です。

1 労務提供上の支障がある場合
2 業務上の秘密が漏洩する場合
3 競業により自社の利益が害される場合
4 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

副業・兼業について認めていく方向ではありますが、多様で柔軟な働き方を選択可能とするような仕組みになっている会社はごく一部です。
大手企業では、副業を認めている会社もあり、厚生労働省のHPではこの事例等についても確認することができます。この就業規則どおり社員が自由に副業・兼業できるような社会になることは企業にとっても、個人にとってもメリットがあるとガイドラインでも示されています。労働時間の管理や雇用保険、納税など少しややこしい問題部分について、もう少し明確になればより一層多様な働き方を選択可能な社会に近づくことができるでしょう。
すべての会社が副業・兼業に前向きではないことから、副業・兼業に関する取り組みについてしっかりと情報を集めて、就職活動をすることはとても大切なことです。
副業・兼業による収入・スキル・経験等の貴重な財産を手に入れることで、あなたの人生はより良いものに変わっていくのではないでしょうか。

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